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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)328号 判決 2000年12月14日

原告

西部産業株式会社

代表者代表取締役

訴訟代理人弁理士

弁護士吉武賢次

神谷巖

被告

竹下産業株式会社

代表者代表取締役

訴訟代理人弁理士

主文

特許庁が平成7年審判第24590号事件及び同第24591号事件について平成10年9月18日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

被告は、発明の名称を「海苔製造装置」とする特許第1514992号の特許(昭和60年5月11日出願、昭和63年3月26日公告、平成1年8月24日設定登録。以下「本件特許1」といい、その発明を「本件発明1」という。)及び発明の名称を「海苔製造方法」とする特許第1761837号特許(上記出願の分割として平成元年出願、平成4年7月17日公告、平成5年5月28日設定登録。以下「本件特許2」といい、その発明を「本件発明2」という。)の特許権者である。

原告は、平成7年11月13日、本件各特許を無効にすることについての審判を請求し、特許庁は、これらをそれぞれ平成7年審判第24590号事件及び同第24591号事件として審理した。被告は、上記両事件における答弁書提出期間内に、願書添付の明細書の明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許1に係る明細書(願書添付の図面を含む。以下「本件明細書1」という。)中の「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した」(甲第2号証の2の6欄4行)の文言を削除するとの訂正(以下「本件訂正1」という。)を請求し、また、本件特許2に係る明細書(願書添付の図面を含む。以下「本件明細書2」という。)の「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した」(甲第3号証の2の5欄28行。)の文言を削除するとの訂正(以下「本件訂正2」という。本件訂正1及び同2において削除した上記語句をそれぞれ「本件削除部分1」、「本件削除部分2」という。)を請求した。特許庁は、上記両事件を併合して審理した結果、平成10年9月18日、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決をし、同月30日、その謄本を原告に送達した。

2  特許請求の範囲(別紙図面参照)

(1)  本件発明1

「簀枠9を間欠搬送する無端状の搬送チェーン1と同期して作動する抄き部2、プレス脱水部4及び剥ぎ取り部8をそれぞれ同チェーン1の搬送方向に沿って配設し、同チェーン1の終端には乾燥室チェーン7を同期して作動すべく配設し、更には抄き部2を複数個の抄き機構13にて構成すると共に、各抄き機構13の抄き作動はすべて同時に同調して間欠作動すべく構成し、一回の抄き部2の抄き作動後の抄き停止間に、搬送チェーン1を抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ間欠搬送作動させ、搬送チェーン1の間欠搬送作動にともなって、乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動するように構成してなる海苔製造装置。」

(2)  本件発明2

「搬送チェーン1の進行方向に沿って前後に配設した複数個の抄き機構13で、複数個の簀枠に同時に抄き作動を行い、このように同時に抄き作動された前後の複数個の簀枠9を乾燥室に搬入するに際して、前後の抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ乾燥室チェーン7を間欠搬送作動させることにより、複数個の簀枠9を乾燥室に一枠毎に搬入するようにしたことを特徴とした海苔製造方法。」

3  審決の理由

審決の理由は、別紙審決書の理由の写しのとおりである。

第3原告主張の審決取消事由の要点

審決の理由中、第1(手続の経緯)、第2(訂正請求)の1(訂正請求1について)の(1)(訂正の趣旨及びその要旨)は認め、(2)(訂正の適否)は争う。2(訂正請求2について)の(1)(訂正の趣旨及びその要旨)は認め、(2)(訂正の適否)は争う。第3(特許に係る発明)の1(本件特許1に係る発明)、2(本件特許2に係る発明)は争い、第4(当事者の主張)は認め、第5(当審の認定、判断)の1(本件特許1について)の(1)(前記無効理由1について)は争い、(2)(前記無効理由2について)、(3)(無効理由3について)は認める。2(本件特許2について)の(1)(前記無効理由1について)は争い、(2)(前記無効理由2について)、(3)(前記無効理由3について)は認める。第6(結語)は争う。

(平成7年審判第24590号事件について)

審決は、本件訂正1が本件明細書1の明りょうでない記載の釈明をするものであるとの誤った判断をして同訂正を認め(取消事由1)、本件明細書1の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本件発明1を実施できる程度に記載されていると誤った判断をして、その結果、平成6年法律第116号による改正前の特許法36条3項(以下、同様)該当性の判断を誤り(取消事由2)、本件明細書1の発明の詳細な説明と特許請求の範囲の記載とが一致するとの誤った判断をして、その結果、上記改正前の特許法36条4項(以下、同様)該当性の判断を誤った(取消事由3)ものであるから、違法として、取り消されるべきである。

1  取消事由1(本件訂正1の判断の誤り)

審決は、本件訂正1が本件明細書1の明りょうでない記載の釈明をするものであると判断し、本件訂正1を認めたが、誤りである。

(1) そもそも、本件発明1にあっては、本件削除部分1の有無に関わらず、特許請求の範囲では、「一回の抄き部2の抄き作動後の抄き停止間に、搬送チェーン1を抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ間欠搬送作動させ、搬送チェーン1の間欠搬送作動にともなって、乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動するように構成」するものとなっているのに、発明の詳細な説明においては、「搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」(6欄16行~18行)とされていて、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″の作動の関連性につき、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との間に決定的な矛盾が存在する。この矛盾の点については、取消事由3において主張するところである。

(2) 本件明細書1の発明の詳細な説明中の、本件削除部分1を含む「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49」(6欄4行、5行)との記載からすると、そこに示された装置においては、内ラチェット車49の作動が上下乾燥室チェーン7′、7″の作動と連動するように連結され、内ラチェット車49が1回作動すれば、上下乾燥室チェーン7′、7″も1回作動するように連動することになる。また、上記記載部分に続く部分には、上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49が2回間欠作動するとき、搬送チェーン1と連動連結した外ラチェット車50が1回間欠作動するとの間欠駆動機構43の構成が述べられた後、「従って、搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」(6欄16行~18行)と記載されている。そして、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″の作動を関連付ける記載は、発明の詳細な説明のその他の部分には、全く存在しないのである。

このように、本件削除部分1は、内ラチェット車49、ひいては、間欠駆動機構43によって、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″の作動を関連付ける必須の記載部分であるから、これを欠くことはできない。

上に記したところによれば、本件削除部分1すなわち「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した」との記載は、これを削除したならば、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″の作動を関連付ける記載がなくなることにより、本件明細書1の記載がより不明りょうになることの明らかなものであるから、明瞭でない記載の釈明には当たらないものである。

(3) 被告は、内ラチェット車49は単に空転するものであり何の役にも立たない旨主張する。

しかし、もし被告主張のとおりであるとするならば、出願人である被告は、発明の詳細な説明に、何の役にも立たないものにつき、作動状況を詳しく記載したうえ、さらに、そのまとめとして、「従って、搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」と記載したことになる(6欄16行~18行)。不合理としかいいようのない主張である。

また、被告は、簀枠を一個ずつ搬送チェーン1から乾燥室チェーン7に受け渡して一個ずつ乾燥室へ搬入する作動は、本件発明1に特有のものでもなく、従前の海苔製造装置には周知の作動であると主張する。

しかし、本件発明1で重要なのは、ただ、簀枠を一個ずつ搬送チェーン1から乾燥室チェーン7に受け渡して一個ずつ乾燥室へ搬入する作動ではなく、搬送チェーン1が、抄き作動のために比較的長く停止した後の抄き停止間に、比較的短い時間停止する間欠搬送作動を複数回行い、その搬送チェーン1の間欠搬送作動に伴って乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動することにより、一回ずつ乾燥室に搬入する作動なのであり、このような作動を可能とするものは、かつて存在したことがない。本件発明においては、この受け渡しをどうするかという課題を解決するためにこそ、間欠駆動機構43に深浅係合歯を設けて、搬送チェーン1と乾燥室チェーン7との間欠駆動をすると同時に、両者の同期をとろうとしていると考えるほかない。しかし、結局のところ、本件明細書1には、この技術的課題をどう解決したのかを当業者に理解させるに足るだけの記載がないのである。

(4) 以上によれば、間欠駆動機構43は、第7チェーン44を介して搬送チェーン1を駆動するもので、乾燥室チェーン7′、7″を駆動してはいないものと理解できる、また、「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49」という記載は誤りである、とする審決の判断が誤っていることは明らかである。

2  取消事由2(本件発明1に係る特許法36条3項該当性の判断の誤り)

審決は、本件明細書1の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本件発明1を実施できる程度に記載されていると判断し、これを前提に、本件発明1が特許法36条3項に違背していないと結論付けたが、誤っている。

(1) 前記のとおり、本件明細書1は、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″の作動を関連付ける技術が開示されていないという不明りょうなものであり、この不明りょうは、本件訂正1による本件削除部分の削除によって、さらにその程度を高めているのであるから、「訂正後の明細書の記載が、これに記載された本件発明1が実施できないほど不明なものとは認められない」といえないことは、明らかである。

したがって、「訂正後の明細書の記載が、これに記載された本件発明1が実施できないほど不明なものとは認められない」(審決書7頁)、「第5図には、上下乾燥室チェーン7′、7″の駆動タイミングが示されており、当業者であれば、このタイミングで、主モーター36から適宜の伝動機構を介して上下乾燥室チェーン7′、7″を駆動させることは、容易になし得ることと認められる」(同7頁)とした審決の判断が誤っていることも、明らかである。

この点に関連して、審決も被告も、当業者であれば、第5図のタイミングで主モーター36から適宜の伝動機構を介して上下乾燥室チェーン7′、7″を駆動させることは、容易になし得ることであるという。

しかし、いかなる当業者であっても、第5図のタイミングチャートによって、主モーター36から伝動機構を介して搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″を作動させることはできない。なぜならば、第2図ないし第4図の間欠駆動機構43の構成では、主モーター36による回動クランク47の1回転おきに搬送チェーン1が1回間欠搬送作動し、回動クランク47が1回転する毎に乾燥室チェーン7が1回間欠搬送する作動を繰り返すから、第5図のタイミングチャートのように搬送チェーン1と乾燥室チェーン7を交互に作動させたり、作動タイミングを1回目と2回目とで違えたりすることは不可能であるからである。

(2) また、本件発明1が、発明の詳細な説明及び図面を読んでも、当業者が容易に実施することができないものであることは、本件訂正1の有無に関係なくいえることである。

本件明細書1には、上記の記載のほかに、「かかる内外ラチェット車49、50とラチェット爪53及びコンロッド48と回動クランク47の間欠駆動機構43は、もう一組1ピッチの位相差をもって配設されており、両方の間欠駆動機構43の作動を合成することによって間欠作動を確実なものとし、第5図のタイミングチャートに示すタイミングで各部を作動させるものであ」(6欄18行~24行)るとも記載されていることは事実である。しかし、もう一組の間欠駆動機構43について記載されているのはこれだけであり、これだけでは、同機構がどのように他の構成部分と連結し、作動をするのか皆目見当がつかない。ここが本件発明1の肝腎な部分であるのに、その記載が省略されていては、当業者といえども、本件発明1を理解し実施することは、不可能である。

3  取消事由3(本件発明1に係る特許法36条4項該当性の判断の誤り)

審決は、本件明細書1の発明の詳細な説明と特許請求の範囲の記載とが一致すると判断し、その結果、本件発明1が特許法36条4項に違背しないと結論付けたが、誤っている。

(1) 本件発明1の特許請求の範囲には、「一回の抄き部2の抄き作動後の抄き停止間に、搬送チェーン1を抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ間欠搬送作動させ、搬送チェーン1の間欠搬送作動にともなって、乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動するように構成」(1欄9行~14行)することが記載されており、これは、搬送チェーン1と乾燥室チェーン7とは、同一回数だけ間欠搬送作動するということを意味するものである。ところが、発明の詳細な説明においては、「搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」(6欄16行~18行)とされており、これは、搬送チェーン1が1回間欠搬送作動する間に乾燥室チェーン7が2回間欠搬送作動するということを意味しているものである。したがって、特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載とは、明らかに矛盾していることになる。

(2) 審決は、本件発明1の特許請求の範囲の「一回の抄き部2の抄き作動後の抄き停止間に、搬送チェーン1を抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ間欠搬送作動させ、搬送チェーン1の間欠搬送作動にともなって、乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動するように構成してなる」という記載に関して、乾燥チェーンの間欠搬送作動は、「搬送チェーンの間欠搬送作動にともなって」されるものであり、前記の抄き停止間にされるものでないと認定し、乾燥チェーンの実際の作動は、第5図のタイミングチャートに示されたものであると、当業者であれば明確に理解することができると判断したが、誤っている。

上記特許請求の範囲の記載は、文言解釈からしても、限られた時間である抄き停止間に乾燥室チェーン7も複数回間欠搬送作動することを意味していることが明らかである。

また、技術的裏付けの不明な第5図の記載によって、当業者が、「搬送チェーンの間欠搬送作動にともなって」を単に搬送チェーンの作動と関連して、という意味に理解することができないことは明らかである。

(平成7年審判第24591号事件について)

審決は、本件訂正2が本件明細書2の明りょうでない記載の釈明をするものであるとの誤った判断をして同訂正を認め(取消事由4)、本件明細書2の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本件発明2を実施できる程度に記載されていると誤った判断をして、その結果、特許法36条3項該当性の判断を誤り(取消事由5)、本件明細書2の発明の詳細な説明と特許請求の範囲の記載とが一致すると誤った判断をして、その結果、特許法36条4項該当性の判断を誤った(取消事由6)ものであるから、審決の判断のすべてに違法があり、取り消されるべきである。

4 取消事由4(本件発明2に係る訂正許可の判断の誤り)

審決は、本件訂正2が本件明細書2の明りょうでない記載の釈明をするものであると判断し、本件訂正2を認めた。しかし、取消事由1で述べたのと同様の趣旨で、この判断は誤っている。

5 取消事由5(本件発明2に係る特許法36条3項該当性の判断の誤り)

審決は、本件明細書2の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本件発明2を実施できる程度に記載されていると判断し、これを前提に、本件発明2が特許法36条3項に違背していないと結論付けた。しかし、次の点を加えるほか、取消事由2で述べたのと同様の趣旨で、この判断は誤っている。

本件明細書2には、「搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」(5欄40行~6欄1行)、「間欠駆動機構43は、もう一組1ピッチの位相差をもって配設されており、両者の間欠駆動機構43の作動を合成することによって間欠作動を確実なものとし」(6欄3行~6行)と記載されているのに対し、第5図をみると、搬送チェーン1が2回間欠作動する間に乾燥室チェーン7が2回間欠作動し、両者は同数回だけ作動することが示されており、明らかに食い違いがある。したがって、当業者において本件発明2を実現する技術を理解することはできない。

6 取消事由6(本件発明2に係る特許法36条4項該当性の判断の誤り)

審決は、本件明細書2の発明の詳細な説明と特許請求の範囲の記載とが一致すると判断し、その結果、本件発明2が特許法36条4項に違背しないと結論付けたが、誤っている。

(1)  本件発明2の特許請求の範囲の「前後の抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ乾燥室チェーン7を間欠搬送作動させる」との記載は、結局のところ、搬送チェーン1から乾燥室チェーン7へ、搬送チェーン1の進行方向に並んだ複数の海苔簀を、搬送チェーン1が作動した時に一度に乾燥室チェーンに渡すことになる。一方で、特許請求の範囲には、「複数個の簀枠9を乾燥室に一枠毎に搬入する」との記載があり、特許請求の範囲の記載自体の内部に矛盾がある。しかも、第5図をみると、搬送チェーン1と乾燥室チェーン7とは、同数回だけ間欠搬送作動をしているから、上記特許請求の範囲の記載と明らかに食い違っている。

(2)  本件発明2の特許請求の範囲の「抄き作動を行い、このように同時に抄き作動された前後の複数個の簀枠9を乾燥室に搬入するに際して、前後の抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ乾燥室チェーン7を間欠搬送作動させることにより、複数個の簀枠9を乾燥室に一枠毎に搬入する」(1欄4行~9行)との記載は、乾燥室チェーン7を間欠搬送作動させるのは、抄き作動後に搬送チェーン1が作動して複数個の簀枠を乾燥室に搬入するときであり、その時点は、搬送チェーン1が作動する抄き停止間と考えられる。ところが、本件発明2の発明の詳細な説明では、搬送チェーン1が1回間欠搬送作動するときに乾燥室チェーン7が2回間欠搬送作動するとしか理解できないから、特許請求の範囲の記載と矛盾する。

第4被告の反論の要点

(平成7年審判第24590号事件について)

審決の平成7年審判第24590号事件についての認定判断は、いずれも正当であり、審決を取り消すべき理由はない。

1  取消事由1(本件発明1に係る訂正許可の判断の誤り)について

(1) 原告は、本件明細書1の「搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」と記載されていることをとらえて、これが特許請求の範囲の記載と矛盾している旨主張する。

しかし、上記語句の前には、搬送チェーン1を作動させる「1組」の内外ラチェット車49、50及びラチッェト爪53の説明が詳細に記載されており、後には、このような間欠駆動機構43は、他に「もう1組」あることが記載されている。したがって、上記語句は、一組の間欠駆動機構43の作動により搬送チェーン1が1回作動する場合を説明しているにすぎない。要するに、1組の間欠駆動機構43と、他の1組の間欠駆動機構43によって、それぞれ搬送チェーン1が1回作動するので、これを「搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」と表記したものであり、上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動するとともに搬送チェーン1も2回作動することは容易に理解できることである。

仮に、原告主張のとおり、内ラチェット車49が1回作動すれば上下乾燥室チェーン7′、7″も1回作動すると解釈すると、まことに奇妙なことになる。搬送チェーン1が1回しか作動しない(海苔簀1列分しか送らない)のに、上下乾燥室チェーン7′、7″は2回も作動することとなり、上下乾燥室チェーン7′、7″は1回は空のまま(海苔簀を搬送チェーン1から受け継がないまま)作動することになり、第5図とも整合しないばかりか、本件発明が意図する技術目的、作用・効果と全く矛盾することになる。このような矛盾が生じないように解釈するためには、「内ラチェット車49は上下乾燥室チェーン7′、7″と直接に連動連結していない」と解する以外にないのである。

(2) 原告は、本件削除部分を削除したならば、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″の作動を関連付ける記載がなくなる旨主張するが、誤りである。搬送チェーン1と乾燥室チェーン7の連動関係は、明細書及び図面に十分に記載されている。

すなわち、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″との連動関係は、一基の主モーター36から動力が伝達される連動機構を介して構成されているものであり、具体的には、本件明細書1の「受渡し部駆動機構46」(5欄36行~38行)が搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″との連動関係を示している。第5図にも、搬送チェーン1の駆動タイミングに合わせて上下乾燥室チェーン7′、7″の駆動タイミングも示されており、また、第1図には第8チェーン45を介して受渡し部駆動機構46に動力を伝達している機構が図示されている。また、発明の詳細な説明には、「本発明では、一回の抄き工程によって同時に複数個の簀枠に対して抄き工程作動を行い、その後の抄き停止時間内に搬送チェーンが複数回の間欠搬送作動を連続して行うことにより」(3欄9行~13行)、「この複数個同時に抄製された海苔を乾燥室に搬入して乾燥させる乾燥室チェーンの作動は、抄き部にある搬送チェーンと同じ間欠搬送作動を行うものであり」(3欄23行~26行)との記載があり、乾燥室チェーン7は、搬送チェーンと同じ間欠搬送作動を行うことが明記されているのである。

(3) 原告は、「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した」との記載は、内ラチェット車49、ひいては、間欠駆動機構43によって、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″の作動を関連付けているから、「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49」の記載は、欠くことのできないものであると主張するが、誤っている。

「内ラチェット車49」は、単なる空転用ラチェット車にすぎないのである。すなわち、本件発明1の間欠駆動機構43では、内外ラチェット車49、50双方の係合歯にラチェット爪53が係合したときのみ1ピッチ送り作動をし、内ラチッェト車49にラチェット爪53が係合しても、外ラチェット車50は駆動されず、内ラチェット車49はタイミングをとるために単なる空転をするのみなのである。したがって、内ラチェット車49は、上下乾燥室チェーン7′、7″及びこれを関連する他のいかなる部材とも連動連結することはないのである。

2  取消事由2(本件発明1に係る特許法36条3項該当性の判断の誤り)について

(1) 原告は、本件明細書1は、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7′、7″の作動を関連付ける技術が開示されていないという不明りょうなものであり、それにもかかわらず、本件訂正1による語句の削除によって、さらに不明りょうとなっているとして、これを前提に、本件発明1が特許法36条3項に違背すると主張する。しかし、その前提が誤っていることは、前述のとおりである。

原告は、「第5図には、上下乾燥室チェーン7′、7″の駆動タイミングが示されており、当業者であれば、このタイミングで、主モーター36から適宜の伝動機構を介して上下乾燥室チェーン7′、7″を駆動させることは、容易になし得ることと認められる」(審決書7頁10行~15行)とした審決の判断が誤っている旨主張する。

しかしながら、乾燥室チェーンと搬送チェーンとの同期作動は、周知の技術である。自動海苔製造装置において、海苔の抄き作動、脱水作動後の搬送は、搬送チェーンで行い、海苔乾燥室への搬入循環は乾燥室チェーンで行う技術は周知であり、かかる搬送チェーンと乾燥室チェーンとの間の簀枠の受渡しに際して両チェーンで同期をとる技術は周知の技術である。要するに、搬送チェーンが1回作動すれば、それにともなって乾燥室チェーンも1回作動し、簀枠の受渡しと簀枠の搬送を円滑に行うというのは周知技術なのである。

また、第5図には、搬送チェーン1の駆動タイミングに合わせて上下乾燥室チェーン7′、7″の駆動タイミングも示され、第1図には第8チェーン45を介して受渡し部駆動機構46に動力を伝達している機構が図示され、本件明細書1には、「従前の乾燥室の搬入機構をそのまま使用して製造速度を高めることができる」(3欄30行~31行)と記載されている以上、当業者であれば、第5図のタイミングで、主モーター36により、適宜の伝動機構を介して上下乾燥室チェーン7′、7″を駆動させることは容易になし得ることである。

(2) 原告は、本件明細書1の発明の詳細な説明中の「もう一組の間欠駆動機構43」がどのように他の構成部分と連結し、作動をするのか皆目見当がつかない旨主張するが、誤っている。

本件明細書1において、すでに一組の間欠駆動機構43について詳細に述べているのであるから、それをそのままもう一組構成すればよいだけのことなのであり、当業者であれば、第5図の上下乾燥室チェーン7′、7″の駆動タイミングで主モーター36から適宜の伝動機構を介して上下乾燥室チェーン7′、7″を駆動させることは容易になし得ることである。また、もう一組の間欠駆動機構43を配設する個所については、他の一組の間欠駆動機構43と互いに対応する位置に配設することぐらい当業者であれば当然に予測し得ることである。

このように、当業者が本件発明1を理解し、実施することは容易なことである。

3  取消事由3(本件発明1に係る特許法36条4項該当性の判断の誤り)について

(1) 原告は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明とで、搬送チェーン1と乾燥室チェーン7との間欠搬送作動の回数が一致しない旨主張する。

しかしながら、前述のとおり、発明の詳細な説明においては、1組の間欠駆動機構43と、他の1組の間欠駆動機構43によって、それぞれ搬送チェーン1が1回作動するので、これを「搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」と表記したものであり、上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動するとともに搬送チェーン1も2回作動することは容易に理解できることであり、原告の上記主張は、誤っている。

(2) 原告は、審決が、乾燥チェーンの間欠搬送作動は、「搬送チェーンの間欠搬送作動にともなって」されるものであり、前記の抄き停止間にされるものでないと認定し、乾燥チェーンの実際の作動は、第5図のタイミングチャートに示されたものであると、当業者であれば明確に理解することができると判断したことを論難する。

しかしながら、本件明細書1の記載からすると、「搬送チェーン1」に加えて「乾燥室チェーン7」までも、「抄き停止間」に間欠搬送作動しなければならない根拠は全くない。すなわち、特許請求の範囲の記載では、「抄き停止間に」の文言が「乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動させるように構成した」の文章に修飾的にかかると理解すべき文脈にはなっておらず、技術的にもそのように解釈すべき根拠もないのである。そして、特許請求の範囲の記載は、素直に読めば、第5図と符合し、何ら矛盾のない記載となっているのである。

(平成7年審判第24591号事件について)

審決の平成7年審判第24591号事件についての認定判断は、いずれも正当であり、審決を取り消すべき理由はない。

4 取消事由4ないし6について

取消事由1ないし3に対して被告が主張したのと同様の趣旨で、原告の主張は誤りである。審決の認定判断に誤りはない。

なお、取消事由6において、原告は、本件発明2の特許請求の範囲の「前後の抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ乾燥室チェーン7を間欠搬送作動させる」との記載は、結局のところ、搬送チェーン1から乾燥室チェーン7へ、搬送チェーン1の進行方向に並んだ複数の海苔簀を、搬送チェーン1が作動した時に一度に乾燥室チェーンに渡すことになると主張する。

しかし、複数の海苔簀を一度に乾燥室チェーンに渡すなどあり得ないことは、本件発明2の明細書、図面から自明のことであり、本件発明の課題からも当然のことである。

また、原告は、本件発明1の特許請求の範囲の「一回の抄き部2の抄き作動後の抄き停止間に、搬送チェーン1を抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ間欠搬送作動させ、搬送チェーン1の間欠搬送作動にともなって、乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動するように構成してなる」という記載に関して、文言解釈からしても、限られた時間である抄き停止間に乾燥室チェーン7も複数回間欠搬送作動することを意味している旨主張するが、この主張も誤っている。

上記記載は、搬送チェーン1が1回作動して一個の簀枠を乾燥室チェーン7に受け渡したら、その後、乾燥室チェーン7も1回作動して受け取った一個の簀枠を乾燥室へ搬入するという、海苔製造装置における当然の作動タイミングを実現できる技術を示しているにすぎないものである。

第5当裁判所の判断

(平成7年審判第24590号事件について)

1  取消事由1(本件発明1に係る訂正許可の判断の誤り)について

(1) 本件発明1において、搬送チェーン1の作動と乾燥室チェーン7の作動との関連付けは、特許請求の範囲で本件発明1の構成要素とされている重要な技術事項である。上記事項の内容につき、特許請求の範囲、及び、発明の詳細な説明のそれぞれの記載の意味するところ、主としては、後者の意味するところをめぐって、原被告の主張が対立しており、この点が、すべての取消事由を通じての、本件の最も主たる争点である。

そこで、まず、上記事項に関する本件明細書1の特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面の記載について検討する。

(イ) 本件発明1の特許請求の範囲に、搬送チェーン1と乾燥室チェーン7の作動を関連付けるものとして、「同チェーン1の終端には乾燥室チェーン7を同期して作動すべく配設し、」、「一回の抄き部2の抄き作動後の抄き停止間に、搬送チェーン1を抄き機構13の複数個の数と同じ回数だけ間欠搬送作動させ、搬送チェーン1の間欠搬送作動にともなって、乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動するように構成し」との記載があることは、当事者間に争いがない。

上記記載によれば、「搬送チェーン1」と「乾燥室チェーン7」とは、同期して作動するものであり、搬送チェーン1が間欠搬送作動すれば、乾燥室チェーン7も同じ回数だけ間欠搬送作動するという構成のものであることが認められる。

(ロ) 発明の詳細な説明についてみる。

甲第2号証の2によれば、本件明細書1の発明の詳細な説明中の発明の一般的な説明では、上記作動をどのように実現するかについて、記載が全くないので分からない。そして、唯一の実施例に係るものとして、「上記の搬送チェーン1、上下乾燥室チェーン7、7′及び各部の作動は、すべて一基の主モーター36からの動力を後述の各種連動機構を介して伝達することによって行われるものであり、」(5欄20行~23行)、「上記連動機構のうち、特に、間欠駆動機構43は・・・コンロッド48にて内外ラチェット車49、50を軸支したラチェット軸51に軸支した揺動クランク52を前後揺動せしめ同クランク52に枢着したラチェット爪53と各ラチェット車49、50の係合歯との係合を介して第7チェーン44に間欠回動作動を行わしめるものであり、特に上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49の外形は外ラチェット車50の外形よりもひとまわり大きくしてあり、内ラチェット車49の係合刃の切込みは、深浅係合歯54、55が交互に切込まれているため、ラチェット爪53が浅係合歯55に係合したときは搬送チェーン1と連動連結した外ラチェット車50は駆動されず内ラチェット車49のみ1ピッチ送り作動をし(第3図)、ラチェット爪53が深係合歯54と係合したときは、内外ラチェット車49、50双方の係合歯に同爪53が係合して同車49、50は同時に1ピッチ送り作動するものである(第4図)(判決注・(第2図)の誤記と認める。)。従って、搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する。」(5欄39行~6欄18行)、「かかる内外ラチェット車49、50とラチェット爪53及びコンロッド48と回動クランク47の間欠駆動機構43は、もう一組1ピッチの位相差をもって配設されており、両方の間欠駆動機構43の作動を合成することによって間欠作動を確実なものとし、第5図のタイミングチャートに示すタイミングで各部を作動させるものであり、各部の作動と時間との関係を示すものである。」(6欄18行~26行)との記載があることが認められる。

上記記載について検討する。

① 「上記の搬送チェーン1、上下乾燥室チェーン7、7′及び各部の作動は、すべて一基の主モーター36からの動力を後述の各種連動機構を介して伝達することによって行われる」(5欄20行~23行)との記載によれば、搬送チェーン1と上下乾燥室チェーン7、7′は、一基の主モーター36からの動力の下に、各種連動機構を介して連動していると認められる。

② 「間欠駆動機構43は・・・コンロッド48にて内外ラチェット車49、50を軸支したラチェット軸51に軸支した揺動クランク52を前後揺動せしめ同クランク52に枢着したラチェット爪53と各ラチェット車49、50の係合歯との係合を介して第7チェーン44に間欠回動作動を行わしめる」(5欄39行~6欄3行)との記載によれば、間欠駆動機構43は、ラチェット爪53と各ラチェット車49、50の係合歯との係合を利用して、第7チェーン44に間欠回動作動を行わせることになる。

③ 「ラチェット爪53が浅係合歯55に係合したときは搬送チェーン1と連動連結した外ラチェット車50は駆動されず内ラチェット車49のみ1ピッチ送り作動をし(第3図)、ラチェット爪53が深係合歯54と係合したときは、内外ラチェット車49、50双方の係合歯に同爪53が係合して同車49、50は同時に1ピッチ送り作動するものである(第2図)。」(6欄8行~16行)との記載によれば、ラチェット爪53と各ラチェット車49、50の係合歯との係合の具合により、内ラチェット車49が2ピッチ送り作動する間に、外ラチェット車50が1ピッチ送り作動することになる。

④ 「搬送チェーン1と連動連結した外ラチェット車50」(6欄9行~10行)との記載によれば、搬送チェーン1は、外ラチェット車50と連動連結していることになる。

⑤ 「特に上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49」(6欄4行、5行)との記載によれば、上下乾燥室チェーン7′、7″は、内ラチェット車49に連動連結していることになる。

⑥ 上記①ないし⑤の下では、「従って、搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する。」(6欄16行~18行)という動作は、一組の間欠駆動機構43に係るものとして、必然的な帰結となるということができる。

⑦ 「かかる内外ラチェット車49、50とラチェット爪53及びコンロッド48と回動クランク47の間欠駆動機構43は、もう一組1ピッチの位相差をもって配設されており、両方の間欠駆動機構43の作動を合成することによって間欠作動を確実なものとし、第5図のタイミングチャートに示すタイミングで各部を作動させるものであり、各部の作動と時間との関係を示すものである。」(6欄18行~26行)との記載によれば、本件発明1の唯一の実施例とされている装置においては、搬送チェーン1は、一組の間欠駆動機構43しか用いないものではなく、二組の間欠駆動機構43を用い、これらを合成することによって、第5図のタイミングチャートに示すタイミングで各部を作動させるものであることが認められる。そして、第5図によれば、搬送チェーン1が1回間欠搬送作動するたびに上下乾燥室チェーン7′、7″が1回間欠作動するというタイミングで作動することになるものであることは、後述のとおりである。

上記「従って、搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する。」との文言について、1組の間欠駆動機構43と、他の1組の間欠駆動機構43によって、それぞれ搬送チェーン1が1回作動するので、これを「搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する」と表記したものであり、上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動するとともに搬送チェーン1も2回作動することは容易に理解できる旨の被告の主張は、その限度においては、正当である。

(ハ) 図面についてみる。

甲第2号証の2によれば、上記③の記載に対応して、第3図において、ラチェット爪53が浅係合歯55に係合しているので、外ラチェット車50が駆動されず、内ラチェット車49のみが1ピッチ送り作動をしている図が示されており、第2図において、ラチェット爪53が深係合歯54と係合しているので、内外ラチェット車49、50双方の係合歯に同爪53が係合し、内外ラチェット車49、50が同時に1ピッチ送り作動をしている図が示されていることが認められる。上記第2図、第3図からすれば、ラチェット爪53と各ラチェット車49、50の係合歯との係合の具合により、内ラチェット車49が2ピッチ送り作動する間に、外ラチェット車50が1ピッチ送り作動するという機構を有することは明らかである。また、同じく甲第2号証の2によれば、第5図において、搬送チェーン1が1回間欠搬送作動した後に、上下乾燥室チェーン7′、7″が短く1回間欠作動し、続いて、すぐに、搬送チェーン1がまた1回間欠搬送作動をし、その後しばらく間隙をおいて、上下乾燥室チェーン7′、7″が短く1回間欠作動し、以上の作動を繰り返すというタイミングが示されていることが認められる。

(ニ) 以上によれば、本件明細書1の発明の詳細な説明及び図面に示されているのは、上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に搬送チェーン1は、2組の間欠駆動機構のそれぞれにより1回ずつ、合計2回作動するという構成のものであるということができる。

(2) 本件訂正1を認める前提として、間欠駆動機構43は、第7チェーン44を介して搬送チェーン1を駆動するもので、乾燥室チェーン7′、7″を駆動してはいないものと理解できる、また、「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49」(甲第2号証の2の6欄4、5行)という記載は誤りである、とした審決の判断が誤りであることは、上記認定に照らし明らかというべきである。

付言するに、審決のいうとおり、「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49」という記載は誤りであるとし、本件訂正1を認めて上記記載を削除したならば、発明の詳細な説明中には、上下乾燥室チェーン7′、7″の駆動を示す記載は失われることになる。また、内ラチェット車49が、上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結していないとすれば、内ラチェット車49は、何のために存在するのか不明となり、さらに重大なことには、「従って、搬送チェーン1は上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に1回作動する。」という記載の意味を理解できないことになるのである。

被告は、「内ラチェット車49」は、単なる空転用ラチェット車にすぎない旨主張する。これが採用できるものでないことは、上述したところに照らして明らかである。

(3) 以上のとおり、間欠駆動機構43は、第7チェーン44を介して搬送チェーン1を駆動するもので、乾燥室チェーン7′、7″を駆動してはいないものと理解でき、また、「上下乾燥室チェーン7′、7″と連動連結した内ラチェット車49」(甲第2号証の2の6欄4、5行)という記載は誤りである、とした審決の判断は、誤りであり、これを前提として本件訂正1を認めたことは、違法であることが明らかである。

2  取消事由2(本件発明1に係る特許法36条3項該当性の判断の誤り)について

(1) 本件明細書1の発明の詳細な説明及び図面に示されているのは、上下乾燥室チェーン7′、7″が2回作動する間に搬送チェーン1は、2組の間欠駆動機構のそれぞれにより1回ずつ、合計2回作動するという構成のものであることは、前述のとおりである。

ところが、本件明細書1の発明の詳細な説明及び図面(甲第2号証の2)によれば、「かかる内外ラチェット車49、50とラチェット爪53及びコンロッド48と回動クランク47の間欠駆動機構43は、もう一組1ピッチの位相差をもって配設されており、両方の間欠駆動機構43の作動を合成することによって間欠作動を確実なものとし、第5図のタイミングチャートに示すタイミングで各部を作動させるものであり、各部の作動と時間との関係を示すものである。」(6欄18行~26行)との記載があり、第5図においては、搬送チェーン1が1回間欠搬送作動した後に、上下乾燥室チェーン7′、7″が1回間欠作動するという作動を繰り返すというタイミングが示されているものの、それのみであり、一組の間欠駆動機構と、もう一組の間欠駆動機構とがどのように連結し、どのようにして第5図のようなタイミングの作動をするのかを示す記載は、本件明細書1(甲第2号証の2)のどこにも見出すことができない。そうすると、本件明細書1の発明の詳細な説明に、当業者が容易に実施できる程度に本件発明1の構成が記載されているということはできず、したがって、本件明細書1の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本件発明1を実施できる程度に記載されているとした審決の判断は、誤っていることが明らかである。

(2) 被告は、本件明細書1において、すでに一組の間欠駆動機構43について詳細に述べているのであるから、それをそのままもう一組構成すればよいだけのことなのであり、当業者であれば、第5図の上下乾燥室チェーン7′、7″の駆動タイミングで主モーター36から適宜の伝動機構を介して上下乾燥室チェーン7′、7″を駆動させることは容易になし得ることであると主張する。

しかしながら、被告主張のように適宜の伝動機構を用いることにより第5図のようなタイミングの作動を実現することが、当業者にとって容易であることは、本件全証拠によっても認めることができない。

(平成7年審判第24591号事件について)

3 取消事由4(本件発明2に係る訂正許可の判断の誤り)及び同5(本件発明2に係る特許法36条3項該当性の判断の誤り)ついて

本件発明1と本件発明2とは、前者が物(装置)の発明であり、後者が方法の発明であるという点で相違するものの、同一の技術を内容とするものであって、少なくとも搬送チェーン1の作動と上下乾燥室チェーン7′、7″との関連付けに関する記載や図面が、本件明細書1のものも本件明細書2のものも全く同じであることは、本件明細書1(甲第2号証の2)と本件明細書2(甲第3号証の2)の対比から明らかである。また、本件訂正2が本件訂正1と同じであることも審決自体から明らかである。

そうすると、取消事由1(本件発明1に係る訂正許可の判断の誤り)及び同2(本件発明1に係る特許法36条3項該当性の判断の誤り)について述べたことは、すべて本件発明2にも当てはまるものであるから、本件訂正2を認めた審決の判断は違法であり、また、本件明細書2の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本件発明2を実施できる程度に記載されているとした審決の判断も、誤っていることが明らかである。

3 以上によれば、その余の点につき検討するまでもなく、審決の判断には瑕疵があり、その瑕疵が審決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。そこで、原告の本訴請求を理由があるものとして認容し、審決を取り消すこととし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山下和明 裁判官 宍戸充 裁判官 阿部正幸)

<以下省略>

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